だいたい分かる 日本の子ども虐待

大学の先生になりたかったけど、もう占い師かコラムニストでいいかな。

ノーベル経済学者はそんなこと言ってない

ブログを書こう書こうと思いながら、下書きばかり溜まっていく日々が過ぎました。

 

そんな中、ちょっと驚いたことがあったので、溜まっている下書きとはまったく関係ない内容で投稿することになってしまいました。

 

その「驚いたこと」というのはコレです。

 

gendai.ismedia.jp

 

ノーベル経済学賞の受賞者でそんな研究していると言えば…ヘックマン?

 でも、このタイトルだし違うかなあ…」

 

と思いながら内容を見てみたところ…

 

 

 

ヘックマンって書いてある!?

そして俺も読んだあの本のタイトルが書いてある!?は?

 

 

なぜそんなに驚くのかというと、タイトルがヘックマンの主張と真逆と言っていいほど違うからです。

 

当該の本の、本文の1~2ページ目にはこのように書いています。

 

“社会政策策定のための三つの大きな教訓が示唆される。

(中略)恵まれない家庭に生まれることが、子どもたちに格差をもたらしている。そこでは生活の質がもっとも基本的な問題であり、両親がそろっているかどうかや、親の収入や学歴といった要素は二次的なものだ。…(下線は引用者)”

 *1

 

幼児教育の経済学

幼児教育の経済学

 

 

 

 この記事を開いてまず初めに思い浮かんだのは、「読書感想文はちゃんと本を読んでから書きましょう!」と、先生がみんなに注意を促している、夏休み前の小学校の風景だ。

いや最初のページくらい読めよ!と。

 

だがしかし、「自分の意図とは関係のないタイトルをつけられた!」という話はよく聞くことだ。

 まさかあの佐藤さんが、そんな間抜けなことをするはずが…

 

と自分自信を落ち着け、読み進めていって思ったこと。

 

「…引用長過ぎね?」

 

文章の半分は引用だし、自分の意見風に書いてある部分も本に書いてあることを繰り返してるだけだし。

 

これ、原稿料は佐藤さんではなくヘックマンに支払ったらよろしいのではないでしょうか。

 

そして最後にちょこっとだけ佐藤さんの意見のようなものが綴られています。

 

保育園・幼稚園を義務教育化し、親の経済力に関係なく、子どもにはできるだけ平等に知育、徳育、体育のバランスが取れた教育を無償で受けさせられるような制度設計が必要だ。

それにかかる2兆円程度の経費は、消費税を1%上げれば確保できる。その結果、将来、生活保護に頼る人が減り、納税者が増えるわけだから、経済合理性もある。

 *2

 

ところがこの短い文章すらヘックマンの意見と食い違います。

 

全国規模のプログラムははるかに費用がかかるし、公的プログラムが家族の個人的な投資に取って代わることによる死荷重の可能性をもたらす。これらの問題に対する一つの解決法は、プログラムは全国一律とするが家族の収入に応じてスライド制の負担額を設定することだ。

*3

 

つまり、応能負担にしたら低所得世帯でもなんとかなるし、市場の歪みも抑えられるしいいんじゃね?

と言うわけです。

 

そこは人によって意見の違いもあるでしょうから、それはそれで別にいいんですが、

それならそれで、なぜヘックマンの主張とは異なり、消費税という、一律の、逆進性の高い税源を充てるべきと考えるのか、説明しながら主張する必要があります。

 

 

もう一つ、小さくない間違いがあります。それはこの部分

低学歴のひとり親のもとで育てられた子どもは、人生のスタート時点での遅れを一生取り戻すことができない。

*4

 

ずっとこの記事で引用されているヘックマンの著書は3部構成になっておりまして、

そのパートⅡは各分野のエキスパートからの、ヘックマンへの批判を含むコメントが掲載されているという、大変マゾヒスティックな構成になっています。

 

そこでは、複数の人が、「人生はやり直せる!」といった反論を、自分たちの実践や研究結果を基に綴っています。

 

例えば、著書「マインドセット」等で有名なキャロル・ドゥエックは、

ヘックマンは非常に費用のかかる幼少期の介入と、非常に費用のかかるもっと後の介入とを比較している。思春期の子ども向けで非認知的要素に対処する、安価かつ効果的な介入があるとしたら、どうだろう?

じつのところ、それらは存在する。

 *5

 

と、自らの研究結果を引合いに出し、就学前教育の効果を強調するために、それ以降の介入政策の効果の低さを喧伝することに批判を加えています。

 

マインドセット「やればできる! 」の研究

マインドセット「やればできる! 」の研究

 

 

解説を除けばたった100ページのこの本で、こんな読書感想文を書けるというのも、考えようによってはすごいことです。

 

 

何事もそうですが、日常生活において、たったの一言でなにかを言い切ってしまうような人や文章に出会ったら、まず間違いなくどこかが間違っている、と考えて良いでしょう。

 

 そして、読書感想文はちゃんと本を読んでから書きましょう。

*1:ジェームズ・J・ヘックマン、古草秀子(訳)(2015):幼児教育の経済学、pp.10~11、東洋経済新報社

*2:前掲記事

*3:ヘックマン(2015):前掲書p.38

*4:前掲記事 

*5:ヘックマン(2015):前掲書p.64